前回の記事では「詰め物」について解説しました。
今回は、「被せ物」について種類や費用、また被せ物が取れた時の対処法についても詳しく解説していきます。
1.保険の「被せ物」に関して
1-1.メタルクラウン(パラジウム合金)
一般的に「銀歯」と呼ばれる被せ物です。銀合金で製作されることから、「金属色が目立つ」「歯茎が黒ずむ」「金属アレルギーのリスクがある」「虫歯が再発しやすい」といった欠点が挙げられます。保険が適用されることから、治療費を大きく抑えられるという利点も存在しています。
1-2.硬質レジン前装冠
金属をベースに、硬質レジンという白いプラスチックを表面に接着した被せ物です。プラスチック製の為、年月が経つと変色や着色が目立つという欠点があります。
2.自由診療の「被せ物」のに関して
2-1.ゴールドクラウン
金額:¥60,000(税抜)※2年保証
金合金で作られた被せ物です。天然歯の硬さに近く、歯質との適合性が高いことから、歯を痛めたり、虫歯を再発させたりするリスクが極めて小さい材料です。ただし、金属色が露出するため、審美性においてはセラミック材料に劣ります。
2-2.メタルボンドクラウン
金額:¥80,000(税抜)※2年保証
外側をセラミック、内側を金属で製作する被せ物です。審美性はオールセラミックにやや劣りますが、強度は十分です。費用も比較的安く抑えることができます。ただし、「経年的な劣化が起こる」「金属アレルギーのリスクがある」といった欠点もあります。
2-3.オールセラミック
金額:¥100,000(税抜)※2年保証
セラミックのみで構成された被せ物です。天然歯のように美しく、強度にも優れ、金属アレルギーのリスクもゼロという利点を有しています。ただし、歯ぎしりがある方などには向かないなどの欠点もあります。
2-4.ジルコニアクラウン
金額:¥130,000(税抜)※2年保証
ジルコニアは、人工ダイヤモンドとも呼ばれる材料で、極めて高い強度を誇ります。セラミックの一種でもあるため、天然歯に近い色合いを出すことも可能です。
3.被せ物が取れた時の応急処置
歯の詰め物や被せ物にも寿命があります。正しいケアを行っていれば、10年20年と使い続けることも可能ですが、何かの拍子に取れてしまうことも珍しくありません。
被せ物は予期せぬ時に外れるもので、すぐに歯医者に行けないというケースも多々あります。そんな時は、次に挙げるような点に注意しましょう。
3-1.冷たいものや熱いものは控える
被せ物が取れると、外部と歯髄腔(しずいくう)との距離が近くなります。歯髄腔とは、歯の神経が存在している部位で、被せ物という遮蔽物がなくなることで外部の温度変化に敏感になってしまうのです。具体的には、冷たいものや熱いものをお口の中に入れた際に「しみる」「痛い」といった症状が現れるようになります。
3-2.強い刺激を加えない
もうすでに神経が死んでいる歯であれば、冷たいものや熱いものがしみるということはありませんが、残った歯質が欠けてしまうということは十分に起こりえます。ですから、被せ物が外れた歯で硬いものを噛まないことはもちろんのこと、歯磨きの際もていねいに磨くよう心がけましょう。
3-3.被せ物を容器で保存する
外れた被せ物は、捨てずに保存しておきましょう。新しい被せ物を作る上で、いろいろと参考になる部分が多いからです。その際、ティッシュペーパーに包んでおくのではなく、容器に入れて保存することが大切です。ティッシュペーパーに包むと、被せ物を紛失したり、変形させたりする恐れがあるため、あまりおすすめできません。外れた時の状態を維持するために、容器に入れて保存しておくのがベストといえます。
4.被せ物が取れた時にやってはいけないこと
被せ物が取れた時に多くの人が行ってしまいがちなNG行動というものがあります。これを行ってしまうと、正しい診察や治療が行えなくなることもあるため注意が必要です。
4-1.接着剤などでくっつける
被せ物はもともと接着剤で固定されています。けれども、それは「歯科用接着剤」であり、市販の接着剤とは大きく異なります。しかも、専門家である歯科医師が細心の注意を払って接着させるものであり、一般の人が行うことは不可能といえます。それにも関わらず、アロンアルファなどで無理やりくっつけようとすると、虫歯の再発を促したり、余計に歯を削らなければならなくなったりしますので、絶対に行わないようにしましょう。
4-2.自分ではめ直す
被せ物によっては、接着剤を使わずに元の位置へと戻せることがあります。そういったケースでも、自己判断で被せ物をはめ直すことは絶対にしないでください。被せ物が外れた歯は、もうすでに汚染されていますので、そのまま元に戻すと、虫歯の再発を促してしまいます。また、戻し方が不十分で噛み合わせに異常が生じると、被せ物が変形したり、残っている歯が割れてしまったりすることも珍しくありません。
4-3.取れた被せ物を捨てる
取れた被せ物は、歯医者を受診するまで捨てないようにしましょう。例え、古い被せ物であっても、そこにはたくさんの有益な情報が含まれています。新しい被せ物を作る上で非常に役立ちますので、容器に入れるなどして保管することが大切です。
5.被せ物が取れたまま放置することのリスク
被せ物が取れても、そのまま放置してしまうケースは意外に多いものです。けれども、被せ物が取れた状態を放置すると、お口の中に様々な悪影響が起こるため注意しなければなりません。
5-1.虫歯が再発する
被せ物が取れると、虫歯治療で削った歯質がむき出しとなります。そこにはすでにエナメル質は存在しておらず、比較的虫歯なりやすい象牙質が露出していることから、虫歯の再発リスクが極めて高くなっているのです。
5-2.歯に穴があく
むき出しとなった象牙質は、食品に含まれる酸によっても溶かされていきます。その結果、被せ物によって守られていた歯質に穴があくことも珍しくありません。もちろん、そこに虫歯の再発が加われば、あっという間に神経まで侵され、重度の虫歯へと発展していくのです。
5-3.歯が欠ける
被せ物が取れた歯は、エナメル質や象牙質が不安定な状態で残っています。これが口腔内に露出すると、ちょっとした刺激で欠けたり、折れたりしてしまうため注意しましょう。
まとめ
このように、被せ物が取れると、お口の中にいろいろなトラブルを引き起こしかねませんので早急に対処しましょう。上述した応急処置を実施することはもちろんですが、何より重要なのは、歯医者を受診して適切な補綴処置を受けることです。その際、審美性や機能性、耐久性に優れた治療法を選択することで、トラブルの再発を防ぐことも可能となります。